刀掛け帯の技法を現代に甦らせる作家
エムㇱアッとは、アイヌの男性が使う刀掛け帯です。平田さんは、その技法を用いて、ポーチやバッグなどの作品を製作する作家です。伝統的には、エムㇱアッは木の内皮をよって作った糸を縦糸にして編まれます。しかし、現代では材料が手に入りづらいため、平田さんも販売用には、現代の素材を用いて製作を行なっています。エムㇱアッの編みの技法を使って製作をする人の数は、アイヌ刺しゅうと違い、多くはありません。
平田さんは、アイヌ伝統工芸に携わる作家としては若手ながら、アイヌ工芸作家の登竜門である北海道アイヌ協会主催の『北海道アイヌ伝統工芸作品展』にて、2020年にエムㇱアッのバッグで優秀賞、2022年にエムㇱアッのデニム生地スマートフォンケースで奨励賞を受賞されました。
Interview
エムㇱアッとの出会い
―-平田さんは、いつエムㇱアッの技法で作品作りをはじめたのですか?
平田さん『2018年、母に勧められて、白老町の担い手養成講座を受講しました。講師は河岸麗子先生で、エムㇱアッの技法を使ったストラップ作りを教えていただきました。初めて講座に行った日は、「こんなに楽しいもの、どうして今日まで知らなかったんだろう!」と思い、忘れないように何個も何個も編んだんです。』
―-エムㇱアッ編みが、とても楽しかったんですね。どんなところが好きですか?
平田さん『子供が小さいときは、手芸用紙バンドを使ってカゴを編むのにハマったこともあります。子連れのママ友5~6人に、家で教えながら一緒に作ったりしていました。私は、ギュッと編めるものが好きみたいです。ゴザ編みも好きですが、材料(ガマ)が手に入らないと、難しいですね。手芸用紙バンドをさいて、ゴザ編みを試してみたこともありましたが、うまく行きませんでした。』
―-ゴザ編みはどこで習ったんですか?
平田さん『しらおいイオル事務所「チキサニ」のゴザ編み体験で、松永八重子先生と山崎シマ子先生に習いました。でも家に編み機がなかったので、父が、チキサニに行って編み機のスケッチと計測をしてくれて、私のために作ってくれたんです。』

―-お父様が協力してくれたんですね!お母様の吉国幸子さんも、アイヌ工芸作家として活動されていますよね。
平田さん『子供用の着物を作った時は、刺しゅうも仕立て方も、母に教えてもらいました。エムㇱアッのポーチなどを作る時も、エムㇱアッ編みの部分は1人でやって、母に縫い方のアドバイスをもらっています。使っている内布も、母の着物の生地を使っています。最近は、コラボして一緒にバッグを作ったりもしています。』


デニム生地とエムㇱアッの出会い
―-平田さんの作品では、デニム生地を使ったものが多いですが、なぜですか?
平田さん『若い人にも、手にとってもらいやすいと考えたからです。それと、エムシアツの編み方は、縦糸につづり紐を使っているので、厚みが出て硬くなります。それを薄い布につけると、どうしても布が負けてしまうのです。その点、デニム生地は厚みがあって、しっかりしているので、使いやすいです。』
―-機能性とデザイン、両方を備えるのがデニムだったんですね。

憧れの先輩たちを目指して
―-今後作りたいものはありますか?
平田さん『すごく幅の広いものを編んで、全体がエムㇱアッ編みで作るバッグを作ってみたいです。でも長く幅広く編むのは大変で、時間もかかります。編む力加減を均等に保つのは難しく、どうしても曲がってしまうのが普通です。いまだに私も、自分が納得したものを編めたことはありません。その点、河岸先生の編みは、真っ直ぐですごいと思います。カエカ(木の内皮を使った糸より)した糸を均等な太さにするのは大変な技術です。その上で、それを真っ直ぐに編むというのは、本当にすごいことです。白老には、いろんな手仕事を知っている方々がいます。私も、ずっと手仕事は続けていきたいと思います。』

※写真は全てご本人の許可を得て撮影・掲載しました
Product
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